ASD者の「いつもと違う」感覚と、世界がゆがむ不安・恐怖の話。

ASD(自閉症スペクトラム障害)者は「想定外の出来事」に極端な苦手さを持つ傾向がある。私もそこそこ苦手だ。

先日、かかりつけのメンタルクリニックでちょっとしたパニックに陥ってしまったので、原因となったできごとと、その時の私の感覚を言葉にしてみようと思う。

好きな食べ物がバラバラなように、同じ診断を受けていても、得意なこと・困っていることは人それぞれ。このブログに書かれていることは、発達障害者みんなが感じていることではない。私が思い、考えていること。たった一つの事例。

私と同じことで困っている人に、私のような人を理解したいと思う人に、届いたら嬉しいと私は思う。

前提

場所はかかりつけのメンタルクリニック。定期的に20回以上は通っている。主治医の先生も、担当心理士の先生も、受付の人も、みんな親切でいい人たちだ。その人たちに対する恐怖心はない。いまだに緊張はするけれど、「逃げ出したい」と思ってしまうような事はかなり前からなくなっていた。

原因となった出来事

クリニックが入っているビルの入口→受付までの間に

診察室ではなく、ビル内のエレベーターで主治医に会ってしまった
カウンセリングルームではなく、建物内の廊下で担当心理士に会ってしまった
受付ではなく、待合室で受付事務の人と会ってしまった

時間で言えば1分〜2分。一連の流れの中で起こったので、私としてはほぼ同時の出来事だった。

クリニックの見た目はいつもどおり、先生たちもいつもどおり。違ったのは「出会う場所」だけ。

世界が足元から歪む

たったこれだけのことなのに、私は強い不安に襲われた。

先生たちの配置が違う。あんなに何度も確認したのに、来る時間を間違ってしまった?そもそも、ここはいつもの病院なのだろうか?私は一体どこにいる?

足元がぐにゃりと硬さを失い、ダリの絵のように世界が歪む。見たこともない世界に迷い込んだような気がした。

頭の中が真っ白になって「逃げ出したい」と思った。実際、後ろに人がいるのに、少し後ずさってしまった。

幸いなことに、事務の方がすぐに受付に戻って、いつもの通りに受け付け作業をしてくれたので、私は(表面上は)冷静さを取り戻すことができた。……その日のカウンセリングは、なかなかひどい有様だったし、本当に落ち着くまでは丸一日かかったけれど。

こうしたパニックは、もともと不安があったり、体調が悪かったりすると出やすくなる。

今回は一人でいる時に、メンタルクリニックで、ほぼ同時に想定外の出来事が起こってしまったのでパニック状態に陥ったのだと思う。

頭ではわかっている

「たったこれだけのことで?」
「おおげさじゃない?」

私もそう思う。わかっている。先生たちがどこにいようと、怖いことは何もない。大した違いではない。けれど、わからなくなってしまうのだ。自分と世界との関係が。ここはどこなのか、いつなのか、そして私は誰なのか。

キッチリカッチリを誰かに強制したいわけじゃない。適当なのが気に食わないわけではない。

ただ、怖い。本当に怖い。

これが、私が「いつもと違う」に感じる不安・恐怖である。できることならなおしたい。穏やかな毎日を過ごしたい、私はそう思っている。

小さな夢

お世話になっている先生方にいつもと違う場所で出くわしてしまった時、ちょっとびっくりして、それから「おはようございます」って笑顔で言えたら、それはどんなに素敵なことだろう。

私の笑顔を見てもらえたら、言葉の何倍のありがとうを伝える方ができるだろう。

そんな小さな夢をひとつずつ増やしながら、私は毎日を生きている。

さて、明日は何を書こうかな。