私は数ヶ月前まで、ドライヤーでしっかり髪を乾かすことができなかった。ドライヤーの音が嫌で怖くてたまらなかったから。これは、そんなお話。
私と同じことで困っている人に、私のような人を理解したいと思う人に、届いたら嬉しいと私は思う。
ドライヤーが嫌
私はドライヤーが嫌いだ。あの音が耐えられない。子供の頃からずっとタオルドライで過ごしてきた。でも残念なことに30歳を過ぎた頃から、タオルドライだけだと頭に湿疹ができるようになってしまった。痛いし、かゆいし、フケが出るし。仕方ないからドライヤーを使うようになった。苦痛の時間が始まった。
ドライヤーは私の精神をガリガリと削る。削られた私は粉チーズみたいにバラバラになっていく。あの音を聞いていると頭がどうにかなってしまいそうで、いつも最後まで乾かすことができなかった。
入浴だけでも疲れるのに、そこからさらに辛い思いをしなければならない。出かけるためにお風呂に入って、ドライヤーでクタクタになって、外出をやめてしまうこともあった。
あまりに辛い時は、主人に乾かしてもらったりもした。美容院では避けようがないから、心を切り離して無になってやり過ごした。
どうしてみんな平気なんだろう。みんな我慢してるのかな、私の我慢が足りないのかな。私はドライヤーが大嫌いだった。
聴覚過敏と耳栓
数ヶ月前、病院に通いはじめて、聴覚に少し過敏さがあることがわかった。なくても生きていけるけど、使って生活が楽になるのなら……、と、私は耳栓を日常的に使うことにした。静かな世界はとても落ち着く。耳栓は私を自由にしてくれた。
耳栓をしてドライヤーを使うと、髪の音が聞こえる。
パチパチ、パラパラ、パサパサ、サラサラ
へぇ、こんな音がしていたんだ。
耳栓をつけなければ聴くことがなかったであろう音。聞かない努力をしてはじめて、聞こえるようになった音。なんだか不思議な気持ちになった。
この音の存在を知らずに人生を終える人は、きっとたくさんいるのだろう。可愛らしい音なのに、とても残念だ。
耳栓を使いはじめた今でも、調子の悪いときは主人に髪を乾かしてもらう。私はその間、気を紛らわすためにテレビや本を見る。
誰かに髪を乾かしてもらうなんて、まるで子供だなと思う。しかも耳栓をして、テレビまで見て。
でも、無理をしてドライヤーを使って、その日1日を台無しにするよりよっぽどいい。相手に手間をかけさせることになっても、一緒に笑って過ごせるほうがいい。
それに、私は彼に髪を乾かしてもらうこの時間が、辛いけれど、ちょっと好きだ。
あと何回、彼に髪を乾かしてもらえるだろうか。そのうち、無音のドライヤーも出てくるだろうか。無音のドライヤーが出ても、ときどきお願いしてみようか。
そんなコトを思いながら、今日も私は髪の音を聴く。
さて、明日は何を書こうかな。