愛する人へのプレゼントに、歌人の木下龍也さんから短歌を買った話。

短歌を買った話

短歌を買った。タンタカタ。今、ごきげんな気分でこの文章を書いている。先ほど受けとった短歌が、私の気に入る一首だったからだ。

というわけで今日は「短歌を買った」お話。

短歌を買う、ということ

最近ラジオを聴くようになった。人の話を聴いていると、余計なことを考えないで済むから。その日、ラジオからは「短歌」が流れた。

人の声で読まれた歌は、目で読む時とは違った情景を伝えてくれた。

その短歌を作ったのは「木下龍也」という歌人で、彼は注文を受け「あなたのための一首」をつくってくれるらしい。

「短歌はそもそも、誰かひとりのためのモノだった」

なるほどなぁ……なんて思いながら、百人一首の好きな歌を口ずさんだりした。

しのぶれど 色に出でにけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで

誰のための歌

私には大切な人がいる。ずっとずっと大好きな人。白黒だった私の世界に「色」をもたらしてくれた人。

もし、私が歌を贈るとしたら、彼以上にふさわしい人はいない。

私の気持ちを歌に乗せてもらおうと思った。

MOJIRETSU
https://kino112.thebase.in/items/8135442

あなたのために短歌を1首つくり、便箋に書いて封筒でお送りします。(中略)例えば傘であったり、恋であったり、冬であったり、象であったり、あなたの名前に含まれる漢字であったり。なんらかのエピソードでも構いません。この短歌を僕はどこにも発表しません。あなたのためにつくります。価格は僕の年齢×100円です。どうぞよろしくお願いいたします。

短歌を売る。(木下龍也さんのnote)
https://note.mu/kino1988/n/n4d94ecc483b1

(在庫追加の際は木下さんのTwitter( @kino112 )でお知らせされるので、興味がある方はフォローをおすすめします)

短歌を買う

あんまり説明を長く書いても悪いかな、なんて思って、お題とそれについての補足説明、合わせて60文字程度で注文した。

もうちょっと長く書けばよかったかも……、小さな後悔と共に短歌ができあがるのを待った。

注文してから20日ほど後、発送連絡があった。

短歌を贈る

ドキドキしながら郵便受けを開けること数回、ついに小さな封筒を見つけた。その中には、香りのついた便箋と、この先、何百回と口ずさむことになるであろう一首が入っていた。

短歌を受けとった彼は、驚いて、ちょっと考えて、そして笑った。

とてもプライベートな内容なので、その短歌は公開しない。

世界で、木下さんと、私と、彼しか知らない一首。いつか消えてしまう歌。なんと儚いみそひともじ。

私はこの31文字が愛おしくてたまらない。言葉が消えるその時まで、この歌と、彼と一緒に笑って生きていきたい。目を閉じて、ほのかな香りを楽しみながら、そんなことを思った。

さて、明日は何を書こうかな。